この記事を読んでもらいたい人
・Apple製品のことが大好きな人
・安価なApple製品に似た製品(=パクリ)が
出そうなのに,なんで出ないのだろうと思う人
・Appleの製品の技術の高さを知りたい人
・通信機器に関わる物理に興味がある人
結論
・やはりApple製品はすごかった.
-理由1
ブランド力を出すためにアルミニウムで筐体(ボディ)を作っている.
-理由2
その上で通信機器として成立させるために,ノウハウや技術が詰め込まれている.
・電波を扱う設計は難しい!
はじめに
こんにちは,りゅういえんじにあです.
Appleから初のヘッドホンが発売になるそうです.
相変わらずAppleの製品はかっこいいですよね.
iPhone12と同じくステンレスボディになるそうです.
ところで,アルミニウムやステンレスがボディに使われた
スマートフォンやタブレット,ノートパソコンって
そんなに種類がないと思いませんか?
僕が競合するメーカの人だったら,
「我々もアルミニウムボディのかっこいいデバイスをつくろう」
と自然に考えるだろうなと思います.
ですが,そうはなってない.
その辺について技術者視点でまとめてみようと思います.
アルミニウムで筐体(ボディ)を作るとどうなるか
では売れるスマートフォンやタブレットを作りたいと考えたとき,
アルミニウムで筐体(ボディ)を作ったときの影響について考えてみます.
ちなみにステンレスもアルミニウムと同じ金属なので,
以下に挙げる特徴はざっくり同じです.
アルミニウムを使うメリット
スマートフォンやタブレットと言ったCPUを搭載する
デバイスの筐体(ボディ)にアルミニウムを使うメリットは以下です.
・冷却性能の向上(→処理能力向上)
・見た目の高級感の向上(→ブランド力向上)
スマートフォンやタブレットは重い処理を行うとCPUが発熱します.
半導体は熱を帯びると性能が低下しますので,熱を逃がす必要があります.
アルミニウムは内部の熱を逃がしやすい(熱伝導率が高い)ので,
デバイスの性能向上に貢献します.
また,アルミニウムはプラスチックよりも見た目の高級感に貢献します.
かつてナポレオンが金よりもアルミニウムを
価値あるものとして扱ったという話があるくらいです.
アルミニウムを使うデメリット
スマートフォンやタブレットと言ったCPUを搭載する
デバイスの筐体(ボディ)にアルミニウムを使うデメリットは以下です.
・電波が外に出にくい(→通信性能低下)
(技術的には「シールド効果」と言います)
ん?通信性能が低下はスマートフォンやタブレットにとって致命的では?
と思われるかもしれません,そのとおりです.
筐体(ボディ)にアルミニウムを使うということは
見た目や内部の処理能力の向上と引き換えに
通信機器としては致命的な弱点を持つ可能性があるのです.
アルミニウムの筐体(ボディ)で通信機器をつくる設計
まぁ,実際製品として発表されているわけですし
設計を頑張ってなんとかした,ということなのですが,
実は電波まわりの設計の難易度はとてつもなく高い
のです.
実際りゅういえんじにあも業務で,
こういった無線関係の設計を行った経験があるのですが,
電子部品の位置がちょっとずれたり,
筐体の厚さがちょっとかわったり
しただけで,とたんに電波の性能が悪くなったります.
(通信品質が悪化する)
以上のことを考えると,Apple製品の設計には
相当な技術の蓄積,ノウハウの蓄積が必要であると容易に想像できます.
一例を挙げるとiPadのセルラーモデルでは,
アルミニウム筐体の工夫について以下のような工夫があるようです.
モバイル通信を快適に利用できるように、iPad の本体側面に小さな帯状のライン (分割線) が縦方向に入っていて、筐体の一部がモバイルデータ通信のアンテナとして働くようになっています。
このように工夫の一部が開示されているのにも関わらず,
模倣したものが多く出回ることがないということは
内部での設計技術,ノウハウの高さを物語っています.
このような工夫,ノウハウが他社に真似のできない
製品を生み出す原動力になっているのでしょう.
おわりに
Apple製品は
「見た目がクールだ,処理性能が高いぞ」
という目線だけで見られがちです.
しかしそれを支えるアルミニウム筐体(ボディ)には,
そもそもiPadやiPhoneを通信機器として使い物にならなくさせてしまうような
とんでもない性質があります.(シールド効果)
結局はそれを解決させ,製品として成立させているわけですが,
それが非常に難易度の高いことであることは一技術者として
簡単に想像できます.
こういったデザイン,処理性能というブランド力を
支える技術,ノウハウの蓄積にも敬意を払いたい
なと感じる次第です.
ありがとうございました.
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